近年、注目されつつある奈良の地酒。
「奈良にうまいものなし」
この言葉があまりに有名であるがゆえに、奈良の酒というと美味しくない。
そんな先入観とともに語られることが多いような印象を受けます。
確かに、名物というと奈良漬に素麺など、どちらかというと地味。美味しいか、というと奈良漬などは好き嫌いもわかれるので
さて、そんな中で近年めきめきとその評価を高めつつあるのが奈良の地酒。
日本酒ブームも手伝い、これまでは目にしなかったような地酒を飲むことができるようになりました。
ここでは、数多くある奈良の地酒を、お酒の風味や飲める・買えるお店とともに「トリセツ」的な感じで紹介をしたいと思います。
今回紹介するのは、奈良県 御所市にある油長(ゆうちょう)酒造が醸す「風の森」。
(私にとっては、このお酒は「美味しくない」と思っていた日本酒を「美味しいもの」というものに変えてくれた出会いの酒でもあります。)
風の森の中でも酒米や磨きの割合によって多くのタイプがありますが、今回はずっしりとした酒質を生み出す「雄町」を使用した純米酒をご紹介します。
風の森の特徴とは?
この風の森の特徴といえば、なんといっても無濾過・無加水で醸されるために生み出される生酒ならではのフレッシュな飲み口。
お酒によっては、お酒を醸造する過程で欠かせない酵母を加熱することによって動きを止めることがあります。
一方、この風の森はその酵母が生きた状態なので、開栓時には炭酸飲料を開けるときのように、プチプチ感を生み出す炭酸ガスが入った状態で飲むことができるんです。
様々な生酒がありますが、風の森シリーズはこの発泡感が強く、まるでスパークリングワインを飲んでいるかのように口の中にシュワッとした飲み口を味わえます。
濃厚かつフレッシュな飲み口
この風の森の雄町。さきほども紹介しましたが炭酸飲料のようなプチプチとした爽快感ある飲み口が特徴。
炭酸飲料と同様、時間が経つにつれてガスが抜けて味が変化するという特徴があります。
開けたて、時間が経ってから味が変化するのも風の森の魅力でもありますが、今回は開栓したてのものをいただきます。
飲んだのは過去にも紹介した、奈良の銘酒・風の森のみを扱う立ち飲み・兵吾。
開けたて、ピチピチの風の森を飲むことができるこちらのお店で飲むこととします。
開栓の儀、というわけではないですが開けたての際には「空きま~す」と伝えてくれるので、こちらのお店であれば開けたてのものを飲むことができます。
開けたての風の森 雄町ですが、純米酒ならではの濃厚な味わいは残しつつ、無濾過の生酒ならではのピチピチとした飲み口を同時に味わうことができるのが魅力。
酒質としてはやや重たさが感じられるお酒ですので、もし濃いお酒が苦手、というのであれば同じ風の森でも飲み口が比較的軽い秋津穂や露葉風などを飲むといいでしょう。
風の森らしさを楽しむなら開けたて、食中酒なら数日置くのもオススメ
今回紹介した風の森 雄町 純米ですが、味わいをざっくりと5つ星であらわすと
濃さ :★★★★
旨味 :★★★★★
酸味 :★
飲みやすさ:★★★
プチプチ感:★★★★★
なんといっても特徴はお米をそれほど磨かずに造られた純米酒ならではの豊かな旨味。そして他のお酒にはないプチプチとしてフレッシュ感。
この2点が大きな特徴と言えると思います。
これらの味わいがあるため、お酒だけでももちろん楽しむこともできます。
これだけにとどまらないのがこの風の森 雄町 純米のすごさ。時間が経つにつれて次第にプチプチとした発泡感がなくなるにつれて味がまろやかに。
今度は円熟味を増したベテラン戦士のようなどっしりと、かつ口のなかで包み込むような優しい味わいを持つお酒に変化していきます。
しっかりした酒質のお酒が造れることで定評のある雄町米ならではの濃厚な味わいはこってりとした料理との愛称も抜群。
肉料理やカルボナーラなど、濃厚かつパンチのある味にも負けないくらいしっかりとしたお酒になっています。
シュワッ、プチプチ、これらの飲み口を楽しめるお酒は多くあれど、味が変化してもまた美味しさが味わえるお酒というのは高い品質だからこそ実現できる味わい。
「うまいものなし」。そんな印象をも一気に変えてしまう素晴らしい一本です。